治験審査委員会と参加者の安全がどう守られているか
治験は、治験審査委員会の審査と、本人の文書による同意のうえで行われます。始める前から終わるまで、参加者の安全と人権を守る仕組みを、GCP省令に沿って段階ごとに説明します。

治験は、参加者の安全と人権を守るための仕組みの上で行われます。中心になるのは、治験を始めてよいかを審査する治験審査委員会(IRB)と、参加者本人の文書による同意です。始める前から実施中まで、誰が何を確かめているのかを段階ごとに説明します。
この記事でわかること
- 治験の始まりから実施中まで、安全を確かめる5つの段階(図解)
- 治験審査委員会に誰が入り、何を審査するのか
- 説明と同意で守られていること
- 実施中のモニタリング、副作用の報告、健康被害の補償
安全を確かめる段階
治験は、国への届け出と委員会の審査を経てから始まり、始まったあとも確認が続きます。
- 1国への届け出依頼者が治験の計画を届け出る
- 2治験審査委員会の審査実施してよいかを医療機関の長に答える
- 3説明と同意文書で説明を受け、文書で同意する
- 4実施中の確認モニタリング、副作用の報告
- 5継続審査1年に1回以上、続けてよいかを審査
GCP省令と、PMDA「治験関連業務」、厚生労働省「治験について(一般の方へ)」にもとづきます。届け出と審査は、どちらも治験を始める前に済ませます。重大な副作用の報告を受けたときなどは、1年を待たずに審査されます。
それぞれの段階には担当が決まっています。
| 担い手 | 主な役割 |
|---|---|
| 治験の依頼者(製薬会社など) | 治験の計画を国に届け出る。モニタリングと監査を行う。健康被害の補償の措置をあらかじめとっておく |
| 治験審査委員会 | 治験を行ってよいか、続けてよいかを審査し、文書で意見を述べる |
| 実施医療機関の長 | 委員会の意見を聴いてから治験を受ける。適当でないとされたら受けない、または中止する |
| 治験責任医師など | 説明と同意の手続きを行う。副作用が疑われる重い有害事象を医療機関の長に報告し、依頼者に知らせる |
| 国(厚生労働省・PMDA) | 治験計画の届け出と、治験中の副作用などの報告を受け付ける |
GCP省令の条文から、参加者の安全に関わる主なものを抜き出しています。
治験審査委員会(IRB)
治験を始める前に、実施医療機関の長は治験審査委員会の意見を聴かなければなりません(GCP省令 第30条)。委員会が「適当でない」と答えた治験は、その医療機関では行えません(第33条)。
委員会の構成はGCP省令 第28条で決められています。医学の専門家だけで決めないように、立場の違う人が加わります。
- 5名以上の委員で構成する
- 医療や臨床試験の専門家ではない人を加える
- 実施医療機関と利害関係のない人を加える
- 委員会の設置者と利害関係のない人を加える
- 依頼者と密接な関係のある人や、治験を行う医師は審議と採決に加わらない第29条
- 手順書・委員名簿・会議の記録の概要を公表する
GCP省令 第28条・第29条にもとづきます。
審査では、治験が倫理的・科学的に妥当か、その医療機関で行うのに適しているかを、次のような資料で確かめます(第32条とそのガイダンス)。
- 治験実施計画書
- 参加者への説明文書
- 参加者を募集する手順(広告など)
- 参加者への支払いと、健康被害の補償について説明した文書
- 治験責任医師の履歴書
説明と同意(インフォームド・コンセント)
参加する前に、治験責任医師などから、決められた事項を書いた説明文書を受け取り、説明を受けます(第50条・第51条)。説明文書には、治験の目的と方法、予測される利益と不利益、ほかの治療方法、参加する期間、いつでも取りやめられること、取りやめても不利益な扱いを受けないこと、健康被害の補償、治験審査委員会のことなどが書かれます。
同意は、強制されたり、判断に不当な影響を受けたりしたものであってはなりません(第52条)。署名した同意文書の写しは参加者に渡されます(第53条)。
参加を続けるかどうかの判断に影響する情報が治験中に得られた場合は、直ちに参加者に伝えられ、続けるかどうかを改めて確かめられます(第54条)。説明と同意の流れは登録から本試験までの流れでも説明しています。
実施中の安全確認
治験が始まったあとも、いくつかの確認が続きます。
- モニタリング依頼者の担当者(モニター)が医療機関を訪れ、計画どおり行われているかを確かめる
- 監査モニタリングとは別の部門の担当者が確かめる
- 重い有害事象の報告副作用が疑われる場合、治験責任医師が直ちに医療機関の長に報告し、依頼者に知らせる
- 国への報告依頼者が治験中の副作用などを国に報告する
- 継続審査委員会が1年に1回以上、続けてよいかを審査する
GCP省令 第21条〜第23条・第31条・第48条、PMDA「治験関連業務」、厚生労働省「治験における副作用への注意」にもとづきます。
委員会が「続けるのは適当でない」と答えた場合、医療機関は治験を中止しなければなりません(第33条)。治験責任医師などは、症例報告書を治験実施計画書に従って正確に作成することが求められています(第47条)。
健康被害が起きたとき
治験の依頼者は、参加者に生じた健康被害を補償するために、あらかじめ保険契約の締結などの措置をとっておかなければなりません(第14条)。補償の内容と、健康被害が起きたときの連絡先や治療については、説明文書に書かれます(第51条)。
情報の公開
厚生労働省の通知(2026年3月)は、参加者を募るための情報提供の対象となる治験について、厚生労働省の臨床研究等提出・公開システム(jRCT)に登録されている必要があるとしています。jRCT では、登録された試験の目的や対象を誰でも確認できます。当サイトでは治験薬の名称や治験の識別記号を表示していません。
このサイトの集計データ
| 全体 | 226件 |
| 入院 | 100件 |
| 通院 | 103件 |
| モニター | 13件 |
| アンケート | 10件 |
この記事のまとめ
- 治験は国への届け出と治験審査委員会の審査を経てから始まり、委員会が適当でないとした治験は行えない
- 委員会は5名以上で、専門家ではない人や利害関係のない人が加わる
- 参加は文書による説明と同意のうえで行い、いつでも取りやめられる
- 実施中もモニタリング、副作用の報告、1年に1回以上の継続審査が続く
- 健康被害の補償の措置は、依頼者があらかじめとっておく
参加の可否は事前検診と実施医療機関の判断で決まります。治験の全体像は治験とは何かで説明しています。現在の募集は募集一覧から探せます。
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よくある質問
治験審査委員会は誰が入っているのですか
5名以上の委員で構成され、医療や臨床試験の専門家ではない人、実施医療機関と利害関係のない人、委員会の設置者と利害関係のない人が加わることがGCP省令 第28条で定められています。
治験審査委員会の情報は公開されていますか
委員会の設置者は、手順書、委員名簿、会議の記録の概要を公表しなければならないと定められています(GCP省令 第28条)。
同意したあとで参加をやめられますか
やめられます。参加はいつでも取りやめられ、取りやめても不利益な扱いを受けないことが説明文書に書かれます(GCP省令 第51条)。
治験中に新しい副作用が分かったら知らせてもらえますか
参加を続けるかどうかの判断に影響する情報が得られた場合、治験責任医師などは直ちに参加者に伝え、参加を続けるかを確かめなければならないと定められています(GCP省令 第54条)。
治験で健康被害が起きたらどうなりますか
治験を依頼する者は、あらかじめ保険契約の締結など補償のための措置をとっておくことがGCP省令 第14条で求められています。補償の内容は説明文書に書かれ、同意の前に説明されます。
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この記事について
参照資料
- 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)第14条、第21条〜第23条、第27条〜第34条、第48条、第50条〜第54条
- 厚生労働省「「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについて」の改正について(令和7年4月1日 医薬薬審発0401第3号)
- 厚生労働省「治験について(一般の方へ)」
- 厚生労働省「3.インフォームド・コンセント」
- 厚生労働省「5.治験における副作用への注意」
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「治験関連業務」
- 厚生労働省「治験等に係る情報提供の取扱いについて」(令和8年3月30日 医薬監麻発0330第1号)
- 臨床研究等提出・公開システム(jRCT)
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